ラテンアメリカ怪談集 (河出文庫)

ラテンアメリカ怪談集 (河出文庫) の詳細

１990年11月に同じ題名、同じ編者による短編集が出版されています。その版は図書館でも所蔵しておらず、古本も結構な値段がするために読んでいません。そのためこの本と同じ内容かどうかは正確にはわからず、編者による「編者あとがき」が作家たちによる対談の形をとっているのは同じですが、1990年版に関するレヴューをみると全12編とあり、この本は全15編です。出版元の河出書房新社のホームページを見ても詳しくは分かりません。従ってご参考のために、掲載順に全作品の題名と作者、一部ですが感想等を書かせていただきます。「火の雨」（レオポルド・ルゴネス）火の雨が降る世界の描写が凄まじい。「彼方で」（オラシオ・キローガ）男と女の間には、心だけの愛情は成立しないらしい。「円環の廃墟」（ホルヘ・ルイス・ボルヘス）自分はただ誰かの夢のまた夢に過ぎないのだとしたら・・・。「リダ・サルの鏡」（ミゲル・アンヘル・アストゥリアス）、「ポルフィリア・ベルナルの日記」（シルビア・オカンポ）「吸血鬼」（マヌエル・ムヒカ＝ライネス）吸血鬼をそれと気づかずに吸血鬼映画の主演にしようとする映画会社の人間たち。その製作の過程でスタッフたちは次第に無気力になり、そして・・・。ラストは思わず目に浮かぶようで可笑しい。「魔法の書」（エンリケ・アンデルソン＝インベル）古本屋で全く重さを感じないローマ字で書かれた読解不能な古書を買った男。ところがそれを読んでいると突然、「いくら読み続けても、この本を読み終えるまでにあなたは死んでいるだろう」という言葉が目に飛び込み、それがさまよえるユダヤ人の自伝であることに気が付く。ラストは若干唐突に終わりを迎えるのだが、哲学的、宗教的、言語学的教示と示唆に富んだ見事な作品。「断頭遊戯」（ホセ・レセマ＝リマ）、「奪われた屋敷」（フリオ・コルタサル）コルタサル初期の傑作。終わりがあるのかないのかは分からない。「波と暮らして」（オクタピオ・パス）、「大空の陰謀」（アドルフォ・ビオイ＝カサレス）、「ミスター・テイラー」（アウグスト・モンテローソ）、「騎兵大佐」（エクトル・アドルフォ・ムレーナ）、「トラクトカツィネ」（カルロス・フエンテス）、「ジャカランダ」（フリオ・ラモン・リベイロ）各作品の中表紙の裏のページに作者の短い紹介があります。